リビングに入ると、ニンマリ笑いながら包丁を持った嫁が立っていて俺と弁護士は後ずさり、というか情けないことに俺が立ちすくんで弁護士が引っ張ってくれた。
そして弟が木刀を構えて
「110番か浮気相手のことを白状するか選べ」みたいなことを言ったらしい(記憶がない)。
嫁が後者を選んだので包丁は弁護士が預かって、間男(当時34)の情報をゲット、驚くことに間男も既婚者。
三連休の谷/間の日、嫁によれば間男は家にいるそうなので、弁護士さんの判断もあって四人で突撃することにした。
インターホンを鳴すと女の人の声がしたので、おそらく奥さんだろうということで
「(間男)さんの奥様でしょうか?」と聞くと
「そうですが…」。
弁護士が
「実は(間男)さんがうんたらすんたらということで話し合いに伺ったのですが」
というと向こう側は驚きと絶句が混ざったみたいな声が聞こえてきた。
5分後ぐらいに玄関が空いたので入ると、結構美人な間嫁(当時30)のお腹が膨らんでいて、聞くと7ヵ月。
正直、嫁より間男に対しての怒りのほうが強かった。
その後、不倫の事実確認や、俺へのサツ人未遂(になるらしい)の事実確認が済んで、弁護士が連絡先をどうこう聞き出し終わって、いざ帰ろうという寸前に弟が
「なあ(間男)さん。(嫁)さんと(間嫁)さん、どっちが大事なの?」と聞いたら、
「愛は(嫁)、情は(間嫁)」と言ったもんだから、間嫁さんが号泣。
間男は
「こっちはなんとか杯(多分競馬)があんだ。邪魔すんな」と二階に上がって行ってしまい、手の付けようがないぐらいの間嫁に、弁護士がスッと名刺を差し出して
「落ち着いたらぜひこちらの事務所に連絡をください。仕事のためではなく、あなたを見ていたら人として居ても立ってもいられなくなりました。(俺)さんや(間嫁)さんのような方を救うことが弁護士として最大の仕事です」
みたいなことを言った。
そのあと、ふと夕焼けが綺麗だなぁと思いながら嫁の実家に到着して、一から事実を説明、最初は鬼のような形相をしていた義両親だったが、最後には平謝り。消し忘れていたテレビと合わせて、
義父「申し訳ありません!」
義母「申し訳ありません!」
タラちゃん「ごめんです」
とキッチリとした間隔で続いたもんだから笑ってしまって、今でもサザエさんでタラちゃんが謝っていると笑ってしまう。
テレビを消して続けた話し合いの末、離婚への支援と、慰謝料のバックアップを約束してもらい、ようやく家路へ着けた。