アントンは自分のことを話し終わると、注文した料理の話に移った。
この味付けは何か一味足りない。
このワインはなんでこんなに不味いのか。
この料理なら私は3分で作れる。
素材が悪い。もっと新鮮な物じゃなきゃだめだ。などなど。
これは大将の耳には入っていなかったので良かったが、ちょっとハラハラした。
でもベテランさんは「やっぱりアイツおもろいwww」って大爆笑だった。
それから私達は大好きなスルメの天ぷらを食べながら
今後の楽しい日々を想像して盛り上がっていた。
アントンはとにかく食う。飲む。
胃下垂だから大丈夫なんだって言ってた。デブなのに。
歓迎会ももうすぐお開きだという頃に、不味いと言っていたワインを2本半飲み、ワインしか飲めないといってたくせにビールも数本飲み、料理を食い散らかしたアントンがやっと大人しくなった。
皆ちょっと疲れてた。
それから30分程してその日は解散した。
次の日、アントンは休んだ。
理由は
「二 日 酔 い」。
やっぱりアントンは関っちゃいけない人だと思った。
とりあえず、アントンは使えない人だった。
でも『出来る女』を演じるのが好きだった。
35歳だから、それなりに事務仕事は出来るだろうと考えていたけど、
両面&縮小&拡大コピーが出来ない。エクセル・ワードもぼちぼち。
電話応対&敬語が変。
なんかドンマイ
そのくせ、全てにおいてオーバーアクション。
一度にコピーを撮ればいいのに数回に分けてバタバタ走り回る。
電話を取れば耳と肩に受話器を挟んで、何故か自分のスケジュール帳
みたいなやつにメモ。
皆アントンには急ぎの仕事や重要な仕事は廻さないようにしてた。
だけど、アントンは常に忙しそう。
電話をとっても早口で乱暴。PCのキーボードはガンガンドスドス。
引き出しを閉めるのはバーンバーン。
いつもアントンの周りでは色んな音がしていた。
そんなある日、アントンがとうとう
や ら か し た。
なにやらかしたか?
ワクワク
社長が一番悪いだろ
>>43
私もそう思います。
いつものように設計の出来ないアントンはFAXを送るよう指示されてた。
不貞腐れながらもFAXを送り、また喫煙室へ消えていった。
最近では、アントンの行動にも皆慣れてきて普通の光景だった。
しばらく経つと、FAXを送ったA社から電話がかかってきた。
「電話番号にFAX送ってない?何回もコール鳴るから取り消してよ」と
苦情の電話。
そこへアントン登場。
設計さんが「電話番号にFAXしてるらしいからやり直して」と書類を渡すと、
「間違ってません。」と一言。
苦情の電話がきた事を話しても「間違ってません」とまだ引かない。
とりあえずもう一回送るようにと言われ、舌打ちをしながらFAXを送りにいった。
さすがに今度は喫煙室へは行かなかった。
誤送信?
>>48
電話番号にFAX送信してたんです。
ドスンという音と共に椅子に座ると、ガンガンドスドス始めた。
設計さんもちょっとイラッとしてたし、周りも凍りついて
ガンガンドスドスだけが響いていた。
ベテランさんは私と目が合うとアントニオ猪木の顔真似をしてきた。
ガンガンドスドスの中、また設計部の電話が鳴った。
アントンは電話も取らず、ガンガンドスドスを続けていた。
仕方なしに友近さんが電話をとると、どうやらA社かららしい。
ひたすら謝っている。
そして、電話を保留してアントンに
「また番号間違えた?早く取り消して」と言うと
アントンはいきなりA社からの電話に出て
「何なん?私は間違えてないし!は?じゃ、番号言ってみなさい!
・・・え?最後が6?・・・そんなん電話とFAX似たような番号にするから
悪いんやろ!・・・は?とりあえず送るからもう電話せんといて!
私が怒られるんやから!」ガチャン!
慌てて社長がA社に謝罪の電話をしてた。
バカ社長、目を覚ませと思った。