そしたらお袋が、「お兄ちゃん保険金下りたでしょう?」って。
弟夫婦、うんうんうなずいてるし。
もう何もかもいやになった。
何で俺に残った身内がこれなんだよ、お前ら全部タヒんでいいから、嫁連れてこいよ。
もうお前らいらねえよ。
俺が消えるよ、お前らが消えないなら。
今日の日を選んだのは、今日が嫁の誕生日だったから。
それまでは、思い出の残るこの部屋にいたかった。
それと、消えるのを邪魔されたくなかったから、あいつらにはもったいなかったが旅行のクーポン渡して、連休に押しかけてきて説得しようとするのを避けた。
嫁の遺品は、指輪とi-pod以外は親御さんのところに送った。
今日、出て行くときに迷惑をかけることになることをわびる手紙を出していくつもりだ。
俺はタヒなない。
ジサツしたら、嫁のいるところにいけなくなるらしいからな。
それに、俺がタヒんだら、俺にかけてる保険金があいつらのところに行くのがいやだ。
蒸発しても、大事なものを持って、貯金ももって逃げれば危険性なしとみなされ捜索とかされないらしいし。
盆から先は、この蒸発のために時間を費やしてきた。
先月付けで、会社も辞めたし。
部屋もさっぱりしたもんだ。たいていのものは捨てたからな。もともと、不妊治療に金がかかりすぎて、生活も質素なもんだったしな。
・・・あいつら「子供がいなくてよかった」と、抜かしやがった。
自分たちはぼこぼこ作っておきながらな。
あいつらへの最大の復讐は今からだ。
新築のマイホーム、ババは俺押し付けて、困ったときだけ頼って、俺が再婚しなきゃ残った保険金は自分たちのものだと、そんな甘っちょろい考え通してやるもんか。
きっとあいつらは、俺が消えた後ぽつんと残されたこのパソコンを必タヒで調べるだろう。
そしてここにたどり着くだろう。
そのときのことを思うと、笑いが止まらなくなるぜ。
俺の決意を誰かに知ってほしくて、過疎なここを選んだ。
既男だったときは「メシマズ」スレで笑わせてもらってたがな。もう、既男じゃないし。
長々とすまない。
今から、嫁との思い出の場所に向かう。
そのあとは、まあ金はあるし、ぶらぶらあちこち回ってみるかな。金が尽きるまでな。
それじゃ。