差出人は眠りこけてる彼女。
本文は『眠い、寝かせてよ。』
彼女の携帯は、ずっと彼女の腕の下だ。
ストラップも見えている。
すうっと首の辺りが寒くなった気がしたものの、飲みに来ていた他の仲間は
「よく出来た悪戯だろ。すげえな。」と感心したので、俺たちもその答えに納得して、その夜はお開きになった。
それからしばらくして、俺は仰天する事となる。彼女が七くなったのだ。
もともと体は弱かったらしい。詳しく聞くのも悪いと思ったので結局聞いていない。
彼氏である友人の希望で、俺は付き添って葬式に出る事になった。
他の仲間もやってきて斎場へ向かい、受け付けを済ませ、式の邪魔にならないよう隅の席で小さく無言で固まっていた。
読経が始まり皆うなだれている。その時ふと、飲み会の事を思い出してゾッとした。
そしてなぜか、そこに居る仲間たちも自分と同じ事を思い出しているに違いないという気持ちがした。
じき、焼香かなという頃、いきなり携帯が鳴り始めた。
おそらくその場に居た全員の。
勿論俺たちは消音にしていた。
でも相当数の携帯のバイブが一斉に反応したのでかなり音が響く。
中には会場に入る前に消音にし忘れた人もいて、あわてて切っていた。
呼び出しは始まりと同じくいきなり切れた。
全員一斉に。
俺たちは黙って顔を見合わせるしかなかった。