立ち止まって通り過ぎた車のテールランプを眺めながら首を傾げていると、車が100メートルほど先で不意に左折した。
 ウィンカーを出さずにいきなり曲がった。
 俺はさっきの合図と照らし合わせて、ついて来いということかなと思ったが、正直怪しくて躊躇った。 
 構わず先を急ごうと前を見たが暗い林を見るとさっきよりも不気味に思えてよし、と引き返したんだ。
角を曲がるとなんと200メートルも先に車が停まってた。
 ますます怪しいのだがここまできたらとそこまでよたよた歩いていった。
 バッグのベルトが肩に食い込んで痛かった。
車の側まで行くと運転席の窓が下りておっさんが顔を出した。
「どこに行こうとしてた?」いきなりそう訊いてきた。 
 「いやあの、××っていうネットカフェに行こうと思ってたんですけど」 
 「乗って。行くから」 
 「え、でも……」 
 「初乗りでいいから。乗って乗って」 
 「はあ」
俺は怪しいと思いながらも成り行きに流されふらふらと乗ってしまった。 
 後部座席に乗り込んでバッグをドスンと下ろしたら運転手がすぐに言った。 
 「あそこ曲がる前に伏せて」 
 「は?」 
 「さっきの道に戻る前に伏せて。座席の前にしゃがみ込んで。荷物も」 
 「ええ?なんでですか?」 
 「後で説明するから。俺がいいと言うまで動かないで」