訳が分からないまま俺は言うなりになって足元にしゃがみ込んだ。
バッグも下に落とした。
運転手はちらっとこっちを見てそのままでねと言った。
窓の外は空しか見えない。
やがて右に曲がったようだった。
直進する。
ほどなく林に入ったと見え窓に木の茂みが流れていった。
林をぬけるのに結構長くて30秒くらいかかった。
運転手はあれきり無言のまま。
いつまでこうしてなきゃならないんだろうと思いながらも喋りかけ辛くてしゃがんでいた。
ふっと嫌な想像が頭を掠めた。
このままさらっていく気じゃないだろうな。
こっそり外を見ようか。
そろそろっと頭を上げ始めた時、運転手が言った。
「着いたよ」
外を見るとそこは確かにネカフェの前だった。
「ありがとうございます」
メーターは回ってなかった。
運転手は初乗り料金を告げ俺は払った。
このまま降りようかと思ったがやっぱり気になってなぜしゃがませたのか、そもそも最初の合図は何だったのかを訊いた。
「いたんだよ、あそこに」・・・