「信号青になってんのに何で動かんのやゴルァ!」
「おい!よお!聞いてんのか?」
運転席の窓が開けられなかったので
手の届く範囲にある、運転席の後ろの席の窓を開けるボタンを押した。
絵に描いたようなチンピラ風の男性が睨んできたので
「出産中です。動けません。」と告げて窓を閉めた。
赤さんの頭が出たと言っても、まだお腹が大きいのでなかなか届かない手を伸ばして、なんとか頭を掴んだ。
掴んだものの、肩が引っ掛かってるのか、なかなか出てこない。
赤さんを少し回転させたら引張り出せそうだったので、思い切って引張り出したらズルンと出てきた。
その瞬間、救急車の音が聞こえた。
チンピラが呼んでくれたのかもしれない。
引張り出した赤さんが泣かないので、背中を上にして叩いていると
救急隊の人が来てくれて、処置をしてくれた。
車の中で臍の緒を切って分離してもらい、同じ救急車で病院に。
赤さんは女の子で、救急隊の人が口の中の羊水をぬいてくれたら元気に泣いた。
安心した私は、その後の記憶があまりない。
病院に着いて、赤さんはきれいに洗ってもらい、私は後処理を受けたが大変なことが。
なんと胎盤がなかった。
レンタカーに置いてきたというか落としてきたらしい。
レンタカーは現場に放置、運転席が血だらけで運転しがたい状況だったので事故扱いでレッカーされたと聞いた。
レンタカー屋さんには本当に申し訳ないことをしたし、
清掃代としてかなりの額を払ったと後日旦那から聞いた。