退局後、祖父母に心からのお礼を言って娘を連れ帰ってきた。
小さな仏壇も用意して、その前が娘のお気に入りの場所になった。
昼間は保育園にあずけたり、嫁の実家にあずけたりして新しい仕事を始めた。
早いと4時、遅くとも6時には帰る事ができるクリニックだったので、娘とすごす時間は格段に増えた。
包茎手術から植毛、美容外科までなんでもやった。
大学の同期の連中からは白い目で見られ続けた。
その手のクリニックが今よりはるかにあやしいイメージの時代だったので。
こんな医者として最下層までドロップアウトした俺を見て育ったのに、娘は医学部に行きたいって言い出した。
正直、今の情勢で医者になるのは疑問だったけど、こんな俺を見ながらにして同じ仕事を目指してくれたのが本当にうれしかった。