ベテランさんが「ごめんごめん」と言いながらトイレにあったタオルでアントンを
拭いていた。
その後、お店にモップ借りて床とアントンの靴を拭いてた。
私たちも大将に布巾をかり、テーブルとか拭いた。
さすがのアントンもビショビショのままで居るわけにいかず、プリプリしながら
帰っていった。
急に酔っ払いになったベテランさんまじナイスwwwだがアントンのバカ親の力とか大丈夫なんだろか・・
そのあと、ベテランさんは大将に
「ビショビショにしてごめんなさい。飲み物粗末にしてごめんなさい。」と
ひたすら謝っていた。
大将が笑顔で「気にせんでええよ」と言ってた。
ベテランさんはクリステルや私たちにも謝ってきた。
私は結構飲んでたせいか、何故か号泣してた。
アントン以外の人が良い人すぎて涙が止まらなかった。
大将にアイスを貰って、皆がタクシーに乗せてくれてお家に帰った。
さすがに次の日アントンは休まなかったけど、ベテランさんにネチネチ
昨日の事を言ってた。
ベテランさんは素直に謝ってた。
謝ってるベテランさん見て、ちょっと心苦しくなった。
この日のアントンはいつも以上に不機嫌だったけど、営業さんが
買ってきたケーキを食べたら機嫌良くなった。
人数分のケーキなのに、外出してた営業さんの分まで食べてた。
それから数日間アントンはちょくちょく問題を起こしたけど、皆普通に過ごしてた。
皆大人だと思った。
クリステルは前の会社でやっていたとかで、営業事務はもちろん
経理や人事・総務などオールマイティな人だった。
ベテランさんと凄く気が合うらしく、2人は仲が良かった。
よく私と友近さんも誘ってくれて、4人で飲みに行ってた。
ベテランさんとクリステルは「ほんと私たち不良主婦だねぇ」って言ってた。
何回に一度は社交辞令でアントンも誘ったけど、「彼氏と会うから」と言って来なかった。
しかも皆に聞こえるくらい大きい声で言ってた。
ブスでデブで性格悪いうえに難聴かと思った。
ここまでで分かると思うけど、アントンには良い所がひとつもない。
如いて言うなら、親が金持ちって事だけ。
この金持ちっていうのも嘘かと思ってたけど、社長曰くこれは本当らしい。
そんなアントンにある朝一番「飲みに行こう」と誘われた。
しかも二人きり。
朝から二人とはまた重いな
もちろん即答で「無理です。用事あります。」って行ったけど聞く耳持たず。
助けを求めようと周りを見るとベテランさんが口パクで「行って来い」って言った。
クリステルは何故か指でOKサインしてた。
友近さんはニヤニヤしながらPCの画面に向かってた。
午前中は仕事が手につかなかった。
基本、女性陣はお弁当持ちだったので休憩室で食べてたんだけど、
金持ちアントンだけはいつも外食してた。
4人になった時、あのOKサインと「行って来い」の意味を聞いた。
すると、友近さんがとんでもない事を言い出した。
「アントンは営業に好きな人おんねんで」
全く意味が分からなかった。
まず、アントンには彼氏がいるはず。
3人からプロポーズをされてるはず。
100歩譲ってそれが嘘だとしても、今までの醜態を見せてて
好きになるも何もないもんだ。バカかと思った。
しかも、なぜ私がアントンと2人で飲みに行かないといけないのか。
全く意味が分からなかった。
話を詳しく聞いてみると、アントンが好きなのは私の隣の席の営業さんだった。
これといって芸能人に似てる人がいないので、「営業男」ってよびます。
営業男は32歳、独身。まぁシュッとした感じの人。
どうしてそれが分かったのか聞くと、皆が「見ればわかる」と言ってた。
大人だなぁって思った。
ベテランさんとクリステルは、アントンもきっと一人で寂しいはず。
自分達にはあまり話しかけてこないけど、晴美(私です)は気に入られるようだから、
ちょっとでも歩み寄ってやろうじゃないかと、他人任せだけど大人な考えを言ってきた。
てっきりアントンが>>1の事を好きなのかと思った
>>112
もしそうだったら、今頃生きてません。
友近さんは、「本当にアントンに恋人が出来れば、心落ち着いて良い人になるはず」
という結論を出していたけど、どう考えても生贄になる営業男が可哀想だった。
どうしても営業男を生贄にするのかと聞くと、
「片思いでもいい。好きな人が側で仕事をしてるだけで落ち着くかもしれない」という。
とりあえずアントンの相談を受けて、適当に立ち回れ。もちろん力は貸すからと。
友近さん1人張り切っていた。
35歳達は、「あんまりいらん事したらあかんで」って心配そうだった。
人の恋愛感情を弄ぶのは禁止とも言われた。
でも私は友近さん命令で生贄となった。
しょうがないので、その日の帰りアントンと飲みに行った。
アントンは本当に金だけはあるらしく、結構高そうな店に連れて行ってくれた。
まずはビールとワインで乾杯。
料理を注文しようとメニューを見てみると、本当にお高い。
ふとアントンを見ると、キモイくらい目を細めて煙草に火を付けてた。
結局、スルメの天ぷらはなかったから適当に頼んだ。
注文も済み店員さんが消え、二人きりになった時アントンが言い出した。
「晴美、あんたにちょっと相談があるねん」
キタ!と思ってアントンを見ると、遠い目をしていた。
クリステルがやると、絶対見惚れるくらいキレイな表情だと思った。
でも相手はアントン。バカにしか見えない。
しかも口から煙草の煙が出て微妙に鼻の穴に吸い込まれてた。
心の中で「ザキ」って呟いた。
話が長かったので適当に端折って書くと、
営業男が好きだ。
今までの男は飽きたので振った。
お前は営業男と仲が良いんだから、なんとかしろ。
って事だった。
たったこれだけの内容を2時間に渡って話された。
確かに席が隣なので、結構仲はいい。
でも、私と営業男の話の中で一番盛り上がるネタは
アントンのガンガンドスドスだったり、アントンのクリステルいじめだったりする。
営業男も本当に可哀想だなぁって思った。何の特徴もないけど良い人なのに。
早く帰りたかった私は「じゃ、協力しますよ」と言って話を終わらそうとしたけど、
アントンは営業男の良い所を延々と話続けた。
やっと開放されて携帯を見ると、友近さんからメールが来てた。
「どうでしたか?帰ったら電話下さい」
どうでもいい情報だけど、友近さんはメールになると、標準語&敬語になる。
しょうがないので、電話して報告した。
友近さんは「あんたの今後にかかってるんやで。頑張ってや」って他人事だった。
とにかく大好きな皆のために頑張ろうと思った。