「はいはーい♪」
―俺だけど、今日予定してた飲み会がなくなってさ。
今からでもよかったらちょっとだけ会わない?
「あー、ごめんね。
もう先輩とごはんの約束しちゃったよー」
―マジかぁ…、先輩って誰?
「えっとね、前話した人!
○○さんと、■■さんとー、その彼氏も来るんだって!
■■さんがねぇ、誕生日なの」
よくもまぁこんなにもスラスラ嘘がつけるもんだと空恐ろしくなった。
まだ僅かに残っていた、許せるものなら許したいという気持ちがきれいさっぱり消えた。
そう、じゃあ楽しんで、と電話を切ってから数十分後、A子のピンクの原付が駐車場に入ってきた。
なんかもう、すべてが夢の中の出来事のようだった。
相手の男は、変な和柄のポロシャツを着たDQNっぽい男だった。
例のサイトのプロフィールによると、30代の会社員らしいが、ボサボサした金髪の、見るからにだらしない感じの男で、金のためにあんな男にでも体を許す彼女を心底汚いと思った。
が、A子は特にためらう素振りも見せず、ニコニコ談笑しながらその男とホテルへ消えていった。
後を追って問い詰めようかとも思ったが、なんだかもう馬鹿馬鹿しくなり、友人を呼び出して飲みに行った。
その友人もA子と知り合った合コンの参加者で、彼女とも面識があったので、俺は情けないと思いつつも事のてん末をすべて愚痴って吐き出してしまった。
友人曰く、
「うまくやってるみたいだったから、敢えて言う必要もないかと思っていたが、
(最初の合コンで)A子ちゃんがお前にぐいぐいアプローチし始めたのは、お前の実家が歯科医院だって知った途端だったもんな。
正直俺はちょっとひっかかってた。
まぁ、結局そういう子だったってことだよな」
だそうだ。
(俺は合コン中盤から若干酔っぱらっていたため、気付かなかった)
翌日、俺は覚悟を決めてA子に電話をかけた。