電話を取るなり、A子はいやに悲しげな声で唐突に話し始めた。
「俺くんはさぁ…、私が軽い気持ちであんなことしてるって思った?
私がどういう思いであんなことしたのか、ちょっとは考えてくれた?
私だって、ほんとはあんなことしたくなかったし、俺くんに知られたくもなかったよ。
でもね、うちのネコいるでしょ。
あの子、持病があって、毎月治療にすごくお金がかかって…。
親は、そこまでできない、諦めなさいって言うんだけど、私はどうしても諦められなくて…」
なんかもうね、アホかと、バカかと。
お前んちのネコなら動画や写真で散々見たっての。
ピンピン遊びまわってたっての。
―あー、そう。
じゃあさ、今からお前んちに電話するわ。
ネコの話聞きましたって。
いい動物病院知ってるんですけどって。
家電にかけるから、一回切るからな。
「ちょっと待ってよ。
そんなことしなくていいし!余計なお世話だし!
てかなんで信じてくれないの!?
ひどいよ!!」
電話口でヒステリックに泣きわめき始めたA子に、言いたいことを全部ぶつけた。
こんな女相手にするだけ無駄、かっこ悪い、と思いつつも、止められなかった。