慌てて帰ると夫は既に亡くなっていた。
遺書を残してあった。
「これ以上生きていても足手まといになるだけだから先に逝くことを許してほしい。保険金が入れば少しでも足しになるだろう。」
というような事が書いてあった。
そして最後に元夫に向けてこう書き加えてあった。
「君の心の痛みはよく分かった。僕がこうする事で君の気持ちを少しは晴れるだろう。責任は全て僕にある。妻や子供たちを責めないでやってほしい。どうか僕のタヒに免じて家族のことを助けてやってほしい。」
そういう趣旨の事が書うてあった。
私は駆けつけた元夫にそれを見せた。
「今日付けで君を解雇する」
彼はそう静かにそう言った。
ギョッとして私は元夫の顔を見上げた。
夫は能面のように物言わぬ冷たい眼差しで私を見据えていた。
「君がした事のあがないは君自身でやるべきだ。弱った俺を切り捨て彼と一緒に歩む決断をした以上、俺に君を守る義理はない。もう君に俺の子を扶養する生活力はないだろうから二人は俺が連れていくよ。名前も俺の姓に変えさせる。夜の仕事でも何でもして、残った家族を養いなさい。あとのことは弁護士とのやり取りになるだろうから、そっちを通して連絡してくれ。」
そう言って彼は去って行った。