深夜まで残業していると滅多に鳴らない電話機が鳴った→俺「もしもし」男『ああ、やっとつながった!Tさん!会いたいです!今から行きます!』俺「!?」

 

俺はしばらくモニターの前から動けずにいた。また男がいつ現れるか。
そう考えるととても外には出られなかった。

 

そうしてモニターを見続けているうちに、段々と夜が明けてきた。
ぼんやりと明るくなってきた外の景色を見ていると、外へ出る勇気が
沸いてきた。恐る恐る玄関へ近づいてみたが、人の気配は無く
静まり返っていた。

 

ロックを解除し、自動ドアが開いた。
すると、ヒラヒラと何かが足元に落ちてきた。茶封筒だった。
拾い上げて中身を見てみると、人型に切られた紙切れが入っていた。

 

これ以上気味の悪い出来事はご免だ、と思った俺は、その紙切れを
封筒に戻した。そして、ビリビリに破いてその辺りに投げ捨てた。
もうすっかり明るくなった中を家まで帰り、ほぼ徹夜だった事もあって
俺は早々に眠り込んだ。

 

週末は不気味な出来事を忘れようと、極力普通に過ごした。
そして週明け、会社に出てきた俺は、T主任の訃報を聞かされた。

 

土曜日の夜、電車に撥ねられたという事だった。
遺体は原型を留めないほどバラバラになっていて、持っていた免許証から
T主任だと判明したという事らしかった。

それを聞いた瞬間、俺は週末の一連の出来事を思い出し、寒気がした。
不気味な電話、T主任を尋ねてきた男、茶封筒の人型の紙。
紙を破った事が、何かT主任の死に影響を与えたのか。

 

沈んだ気持ちでT主任の葬儀に出席し、花の置かれたT主任のデスクを背に
仕事をした。断言はできないが、責任の一端があるのかもしれないという
もやもやとした罪悪感が、t主任の死後、しばらくは常に頭の中を覆っていた。

 

それから半年程経って、徐々にその罪悪感も薄まってきた頃、急な仕事で
深夜まで残業する機会があった。同じ部署のA係長も残業しており、会社には
俺とA係長の二人だけが残っていた。

 

不意にまた、あの電話が鳴った。
俺は心臓が止まりそうになった。あの半年前の出来事も忘れかけていたのに、
電話が鳴った事で克明に思い出してしまった。
青ざめる俺をよそに、A係長は「うるさいなあ」と言いながら電話に近づいていった。
出ないでくれ、と言う前に、A係長は受話器を取ってしまった。

 

引用:MOJOLICA MOJORCA
画像出典:photo AC

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